日本神話には数々の英雄譚がありますが、中でも最もダイナミックで人気のあるエピソードの一つが「ヤマタノオロチ退治」です。
高天原を追放された暴れん坊の神、スサノオ。彼が地上に降りて最初に出会ったのが、八岐大蛇という恐ろしい怪物でした。この物語は、単なる怪物退治に留まらず、スサノオが英雄として成長し、一人の女性を救い、そして日本の国造りへと繋がる重要な転換点となります。
この記事では、スサノオと八岐大蛇の物語を、初心者の方にも分かりやすく解説します。
1. 高天原を追放されたスサノオ
スサノオは、姉であるアマテラスの統治する高天原で数々の乱暴狼藉を働き、ついに追放されてしまいます。彼は地上に降り立ち、出雲国(現在の島根県)の肥河(ひのかわ)の上流にたどり着きました。
2. 泣き声を聞く
一人で歩いていると、老夫婦が娘を真ん中にして泣いているのを見つけます。スサノオが尋ねると、彼らはその地の国神であるアシナヅチとテナヅチで、泣いている理由は、恐ろしい八岐大蛇に毎年娘を一人ずつ食べられてしまうからだと語りました。
今年は最後の娘である「櫛名田比売(クシナダヒメ)」が食べられる番だというのです。
3. 八岐大蛇とは?
老夫婦から語られた八岐大蛇は、驚くほど巨大な怪物でした。
- 姿形:目が赤く、八つの頭と八つの尾を持つ巨大な蛇。
- 大きさ:体は八つの峰と八つの谷にまたがるほど巨大。
- 特徴:背中には苔や檜が生え、八つの頭にはそれぞれ酒を好むとされています。
この話を聞いたスサノオは、櫛名田比売の美しさに心惹かれ、彼女を助けることを決意します。
4. 決死の作戦!八塩折之酒(やしおおりのさけ)
スサノオはまず、櫛名田比売を美しい姿から櫛(くし)に変え、自分の髪に挿して身を守りました。そして、老夫婦にこう命じます。
「八つの門がある垣を作り、その門ごとに酒樽を置け。そして、酒樽には特別な酒『八塩折之酒(やしおおりのさけ)』を満たしておくのだ。」
この酒は、何度も何度も繰り返し醸造した、非常に強い酒でした。
5. 巨大な怪物との対決
命じられた通りに準備が整うと、八岐大蛇がやってきました。 その八つの頭は、八つの門に置かれた酒の香りを嗅ぎつけ、それぞれの頭を樽の中に入れ、一気に飲み干してしまいます。
強い酒に酔っぱらった八岐大蛇は、ついにその場で眠りこけてしまいました。
6. スサノオの英雄的行動
好機を逃さず、スサノオは腰に差していた十拳剣(とつかのつるぎ)を抜き放ち、眠りこける大蛇に斬りかかります。
八つの頭、そして八つの尾を次々と切り落とし、見事に退治しました。その際、真ん中の尾を斬ろうとしたとき、剣の刃が欠けてしまいます。不思議に思い、尾を割ってみると、中から一振りの立派な剣が出てきました。
7. 草薙剣と櫛名田比売との結婚
スサノオは、その剣が神聖なものであることを悟り、これをアマテラスに献上しました。この剣こそが、後に三種の神器の一つとなる「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」です。
そして、スサノオは約束通り、櫛名田比売を妻として迎え、出雲の地に新居を構え、平和な暮らしを始めました。このとき、スサノオが詠んだとされる歌が、日本最古の和歌とされる「八雲立つ」の歌です。
まとめ
八岐大蛇退治は、スサノオが乱暴者から英雄へと成長する物語です。一人の女性を救い、邪悪な怪物を倒し、さらに天皇家へと続く宝物(草薙剣)を発見するという、重要な出来事が凝縮されています。
このエピソードから、スサノオはただの暴れん坊ではない、勇敢で思慮深い一面を持った神であることがわかりますね。 この記事が、日本の神話に興味を持つきっかけとなれば幸いです。
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